確定申告の基礎知識

確定申告が必要な人

  • アパート経営により家賃収入等がある人
  • 会社員でアパート経営の年間所得が20万円以上の人※1
  • 会社員でアパート経営の年間収支が赤字の人※2

※1アパート経営の年間所得が20円未満は申告不要 ※2給与所得と不動産所得の赤字を相殺(損益通算)できます。

損益通算
所得が複数あり、赤字の所得がある場合、他の所得の黒字と相殺する事ができます。給与所得、不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得等。 ただし、不動産所得の赤字部分の一部、株式の譲渡や不動産の譲渡所得は対象外です。
収入
いわゆる売上のことです。アパート経営では家賃、共益費、更新料、礼金、返還の必要のない敷金の償却分などがこれにあたります。
所得
収入より必要経費を差し引いたものをいいます。損益通算すべき全ての所得を合算したものに対して課税されます。

所得の種類と概要

利子所得
利子所得とは、預貯金や公社債の利子並びに合同運用信託、公社債投資信託及び公募公社債等運用投資信託の収益の分配に係る所得をいいます。
配当所得
配当所得とは、株主や出資者が法人から受ける配当や、投資信託及び特定受益証券発行信託の収益の分配などに係る所得をいいます。
譲渡所得
譲渡所得とは土地、建物、株式、ゴルフ会員権などの資産を譲渡により生ずる所得をいいます。
不動産所得
不動産所得とは土地や建物などの不動産、不動産の上に存する権利(地上権又は永小作権の設定その他、他人に不動産等を使用させることを含む。)をいいます。
事業所得
事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業から生ずる所得をいいます。 ただし、不動産の貸付けや山林の譲渡による所得は事業所得ではなく、原則として不動産所得や山林所得になります。
給与所得
給与所得とは、勤務先から受ける給料、賞与などの所得をいいます。
退職所得
退職所得とは、退職により勤務先から受ける退職手当や加入員の退職に基因して支払われる厚生年金保険法に基づく一時金などの所得をいいます。
山林所得
山林所得とは、山林を伐採して譲渡したり、立木のままで譲渡することによって生ずる所得を いいます。
一時所得
一時所得とは、上記いずれの所得にも該当しないもので、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外のものであって、 労務その他の役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない一時の所得をいいます。

【例えば次に掲げるようなものに係る所得が該当します】

  • ●懸賞や福引の賞金品、競馬や競輪の払戻金
  • ●生命保険の一時金や損害保険の満期返戻金
  • ●法人から贈与された金品
雑所得
雑所得とは、上記いずれにも該当しない所得をいいます。

【例えば次に掲げるようなものに係る所得が該当します】

  • ●公的年金等
  • ●非営業用貸金の利子
  • ●著述家や作家以外の人が受ける原稿料や印税

青色申告と白色申告

青色申告※1 白色申告
特別控除 事業的規模※2であり、複式簿記の採用を条件に65万円の特別控除が損金算入できます。 なし
専従者給与 事業的規模に達している場合、給与を支払っている場合、専従者控除として全額損金算入できる。 配偶者は65万円それ以外は50万円まで必要経費に算入できる。
損失の繰越 損失が発生した場合3年間その損失を繰り越すことができる。また、前年に繰り戻して支払った税金の還付を受けることができる。 なし

※1諸条件があります。 ※2事業的規模とは、おおむね5棟または10室の経営規模をいいます。

確定申告計算例

【不動産所得のみの場合】

1年分(個人の場合は12月31日で集計する)

収入 家賃収入 3,500,000
礼金収入 150,000
更新料 150,000
敷金償却収入 100,000
3,900,000
経費 減価償却費
(法定耐用年数で計算)
1,200,000
固定資産税 250,000
修繕維持費
(建物維持費・原状回復)
100,000
消耗品費
(共用部電球等)
10,000
火災保険料
(掛け金のうち、当年分)
50,000
水道光熱費
(共用部の電気・水道代等)
20,000
交通費
(点検のために支出)
10,000
委託管理費 100,000
賃貸仲介手数料
(入居者募集経費)
150,000
ローン置換手数料 200,000
立退料 100,000
税理士報酬得 150,000
その他
(運営上必要な場合に限る)
50,000
支払利息
(建物・土地・設備)
300,000
2,690,000
所得の額(収支) ①-② 1,210,000

【給与所得+不動産所得の場合】

収入 給与所得 5,000,000
家賃収入 3,500,000
礼金収入 150,000
更新料 150,000
敷金償却収入 100,000
8,900,000
経費 給与所得控除の額 1,200,000
基礎控除 380,000
扶養控除 760,000
保険その他の控除 50,000
社会保険料 250,000
減価償却費
(法定耐用年数で計算)
1,200,000
固定資産税 250,000
修繕維持費
(建物維持費・原状回復)
100,000
水道光熱費
(共用部の電気・水道代等)
20,000
委託管理費 100,000
賃貸仲介手数料
(入居者募集経費)
150,000
税理士報酬得 150,000
その他
(運営上必要な場合に限る)
50,000
支払利息
(建物・土地・設備)
300,000
4,910,000
所得の額(収支) ①-② 3,990,000

※これは、概略です。税法には様々な特例や前提条件があり、また、頻繁に税法改正が行われております。実際の申告の際には税理士等にご相談ください。

修繕費の取扱

修繕費や内外装費は確定申告により、経費として不動産収入より差し引くことができます。 工事内容により、一括経費算入できるものと何年かに分けて計上できるもの(減価償却資産)とに分かれます。

取得時の税務上の取扱い

本則 取得価額が10万円未満 全額が損金計上
取得価額が10万円以上 減価償却資産として耐用年数により損金計上
特例 取得価額が10万円以上20万円未満 3年間で均等に損金計上を選択可能
取得価額が30万円未満 青色申告の場合は取得時に全額
損金計上(年間300万円が限度)
※災害に伴う支出の場合は特例がありますので別途ご相談ください。

修繕費か減価償却資産かの判定フローチャート

減価償却資産(資産計上)

支出が20万円未満
周期が概ね3年以内
明らかに資産価値や
耐久性を高める支出
通常の維持管理支出
60万円未満または
前年未取得価格10%以下

修繕維持費(損金計上)

※これは、概略です。税法には様々な特例や前提条件があり、また、頻繁に税法改正が行われております。実際の申告の際には税理士等にご相談ください。

※工事の内容は下記の項目を参考に詳細に記載してもらいましょう。支出時に必要経費として計上できる金額が多くなります。

よくある事例

各部屋の給湯機が古くなったので全部屋10台を60万円で交換した
(本則に則り10万円未満の取得のため)
損金計上
応接セット テーブル15万円椅子4脚×8万円をエントランス用に購入した
(一対で機能するものとみなされ、金額的に資産計上)
資産計上
退出時の修繕費35万円を入居者と折半した
(通常の経費で資産価値、耐久性を高めない現状を維持するための支出)
損金計上
台風で破損した屋根外壁を500万円で補修した
(通常の経費で資産価値、耐久性を高めない現状を維持するための支出)
損金計上
トタン屋根の駐輪場屋根が古くなったのでガルバリウム鋼板に葺き替えた
(資産価値を高める耐久性を高める)
資産計上
101号室を1LDK洋室に300万円かけ、改装した
(資産価値を高める耐久性を高める)
資産計上
一階の店舗を1DK×2部屋に改装して500万円支払った
(資産価値を高める耐久性を高める)
資産計上
外壁のコーキング工事の見積が300万円だったが、この際なので総額1000万円でタイル張りにした。
(300万円部分は現状を維持する支出だが700万円部分は資産価値を高める支出)
300万円修繕費
他資産計上
10部屋にテレビ付きインターホンを設置、10×12万円で120万円支出
(一対で機能するものでなければ1部屋毎に判定。1個が20万円未満)
損金計上
10部屋に乾燥機付洗濯機32万円を全室設置して320万円支出した
(1個毎に判定するが30万円以上なので資産計上)
資産計上

※青色申告を想定しています。(白色申告の場合はご相談ください)